法人税の税務調査の流れと事前に知っておくべきポイントを解説
法人税の税務調査の流れと事前に知っておくべきポイントを解説
法人税の税務調査を受ける確率は年3~4%程度であり、5年間で5社に1社は調査対象となります。
税務調査の流れを把握していれば心構えができますし、必要に応じて対策を講じることも可能ですので、今回は法人税の実地調査が行われる際の流れについて解説します。
税務調査の連絡から準備までの流れ
税務署が税務調査を実施する連絡が入りましたら、調査の日程調整と必要書類を準備することになります。
税務調査は原則事前通知が行われる
税務調査は、納税者に対して調査を実施する旨を伝える事前通知が行われます。
税務署が行う税務調査は任意調査ですが、調査自体は拒否することはできません。
税務調査は事前通知を行うのが原則ですが、脱税犯や事前に連絡することで逃亡等の恐れがあるときは、事前通知を不要とする「無予告調査」が行われることもあります。
事前通知では、調査担当者から電話で以下の事項が伝えられますので、納税者は調査当日までに、対象年分・税目に関係する書類等を用意してください。
<事前通知の際に調査担当者から伝えられる事項>
- 調査日
- 調査場所
- 調査の目的
- 調査対象税目
- 調査対象期間
- 調査の対象となる帳簿書類等
調査担当者との日程調整
臨場調査は10時から16時まで1日中行うのが基本で、納税者と調査担当者の同意した日時に実施します。
休日を調査日に指定することはできませんが、調査開始・終了時間を前後にずらすことはできるため、時間の都合が悪い場合には日程調整の際に調査担当者へ伝えてください。
対象税目・年分の申告書に税理士が関与している場合、税務署は関与税理士に連絡して日程調整等を行います。
そのため、調査に関する負担を軽減したい方は税理士に依頼するのも選択肢の一つです。
臨場調査に向けた準備
調査日が決定しましたら、臨場調査に向けた準備を行います。
税務署は調査事項が解明されるまで調査を終わらせませんし、書類等の提示を拒むと不正等を疑うことがあるため、税務調査をスムーズに終了させるためにも、書類等の事前準備は不可欠です。
臨場調査の流れと注意点
臨場調査は基本的に事務所で実施されることになりますが、事務所での対応が難しい場合には、経営者の自宅や税理士事務所で行われることもあります。
午前は経営者へのヒアリング
臨場調査は、最初に経営者に対してヒアリングが行われます。
会社の概要や最近の経営状況、取引内容などの事業に関する内容を主に聴取されますが、本題の前に世間話が入ることが多いです。
ただし、調査担当者は世間話の中に調査関連の内容を含めていることがありますので、不必要なことは話さない方がいいでしょう。
午後は申告に関連する資料等の調査
経営者へのヒアリングが終わると、午後から申告書に関する調査が行われます。
調査担当者が調べているときは、経理担当者が同席していれば経営者は調査の場から離席しても問題ありません。
調査担当者からの質問についてはその都度回答することになりますが、その場での回答が難しい事項については回答を一旦保留にし、事実関係を確認してから回答するようにしてください。
間違った回答は虚偽答弁とみなされ、重加算税が課される要因となりかねませんので、一つ一つの回答にも注意を払うことが肝要です。
調査終了時の講評
調査が終了しますと、調査担当者から講評が入ります。
調査担当者は臨場調査で調べた内容を税務署内で精査しますので、その場で調査が完了することはありません。
講評では、調査で判明した申告に関する事項や今後の流れについての説明があります。
なお、法人税の調査は調べる項目が多いため、調査が2日目に突入することも想定されます。
臨場調査後から税務調査完了までの流れ
臨場調査が終わった後、早ければ1週間から2週間後に調査担当者から調査結果の説明を行う旨の連絡が入ります。
反面調査の実施
臨場調査が終了後、調査担当者は必要に応じて反面調査を実施します。
反面調査は取引先や金融機関等に対して行われ、調査時に確認した事項との相違点や、新たな調査事項が判明した場合には再び臨場調査が行われます。
調査結果の説明
税務調査が終了する際は、調査結果の説明が行われます。
調査結果の説明は申告内容の有無に関係なく実施され、申告内容に誤りがあれば問題点の指摘と修正申告等の勧奨、申告内容が適正であれば是認通知書が交付されます。
指摘事項に納得していれば、勧奨に応じて修正申告書を提出することになりますが、調査結果に納得できない場合には勧奨に応じないのも選択肢の一つです。
ただし、勧奨に応じなければ税務署は更正処分を行いますので、処分の取り消しや変更を求める不服申立てを行うことも視野に入れる必要があります。
修正申告書の提出および納付
修正申告等の勧奨に応じる場合、修正申告書の提出と納税を行います。
加算税・延滞税は本税を納付した後に通知書が送られてきますので、同封の納付書で支払いを済ませてください。
税理士がいるだけで調査に関する負担は軽減される
税理士は税金のアドバイスだけでなく、調査対応のサポートを行う役割もありますので、調査による負担を軽減したい場合は依頼することも検討してください。
申告書に一緒に提出した税務代理権限証書の「調査の通知に関する同意」欄に、レ印が記載されている場合、調査担当者は関与税理士に対して調査の通知を行いますので、納税者は直接調査担当者と日程調整等のやり取りをする必要がありません。
調査日が決まりましたら税理士と打ち合わせを行い、必要となる書類の確認や調査時の注意点のレクチャーを受けます。
臨場調査前に申告漏れ等が判明していた場合、すぐに修正申告書等を提出することで適用される加算税を軽減することも可能です。
臨場調査は税理士に依頼している場合でも立ち会わなければいけませんが、税理士が間に入ることで税務調査の負担は軽減されますし、はじめての調査でも冷静に対応することができます。
まとめ
実地調査のほとんどは事前連絡が入りますので、調査を受ける準備を整えることができます。
調査担当者は事実を曲げて課税することはありませんが、見解が相違している事項については納税者としての意見を主張しないと、経費が否認されるなどの影響を被ることになります。
税務調査に関する不安が少しでもある場合は、前もって税理士に相談し、必要に応じて対策を講じてください。