税務調査の対象期間と例外的に調査年分が拡大するケースを解説

税務調査の対象期間と例外的に調査年分が拡大するケースを解説

税務調査は、個人に対しては確定申告時期を除く期間、法人であれば1年中実施されます。

調査が実施されるタイミングは申告書を提出した直後だけでなく、数年後に行われることも多いです。

本記事では法律で定められた税務調査の期間と、実際に調査対象となる申告年分の範囲について解説します。

税務職員が調査を行うことができる根拠

税務署の職員が納税者に対して調査を実施できるのは、質問検査権が与えられているからです。

質問検査権は適正公平な課税の確保の観点から、税務職員が納税義務者等に対して質問したり、帳簿書類の提示・提出を求め、それらを調べることができる権利をいいます。

税務職員は対象となる税目に関して調査が必要であると認められる場合、年間を通じていつでも質問検査権を行使することができるため、納税者は常に調査を受ける可能性があります。

法律上で認められている調査期間

税務職員が税務調査を実施できる範囲は決まっており、対象期間から外れた年分の申告書に対して調査が行われることはありません。

調査対象期間は原則5年

税務調査を実施できる期間は、原則5年です。

5年以内であればいつでも調査を実施することができるため、申告書を提出してから数年後に過去の申告書を調査することも珍しくありません。

税務署は申告期限から5年を経過した場合、調査が実施できなくなりますが、調査対象年分に関連する資料は5年以上遡って調べますので注意してください。

調査期間の例外的なケース

調査期間の5年は各税目に共通していますが、調査期間が別途設けられている税目もあります。

贈与税の調査期間は6年と、他の税目よりも期間が1年長く設定されており、法人税に係る純損失等の金額についての更正については10年です。

脱税が見込まれる申告の調査期間は7年

調査期間は原則5年ですが、不正行為等による税金逃れについての調査期間は7年に拡大します。

脱税する目的で売上除外や経費の水増ししている場合はもちろんのこと、意図的な無申告に対する調査期間も7年になることがあります。

実際の税務調査で対象となる調査期間


法律上で認められている調査期間と、実際の税務調査で対象とする調査期間は必ずしも一致するとは限りません。

調査対象期間は実地調査が行われる前に伝えられる

実地調査が行われる場合、事前通知の際に対象税目や対象年分が伝えられます。

税務調査では、基本的に通知された税目・年分の申告しか調査することはありません。

しかし、実地の調査を行う過程において、把握した非違と同様の誤りが事前通知をした調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合、事前通知した事項以外の事項について調査を行うことがあります。

継続的な不正行為などがあれば調査対象年分が拡大しますので、調査の有無に関係なく適正な申告を心掛けてください。

一般調査では3年分の申告書を調査対象とする

法律上は5年前まで遡って調査することもできますが、一般的な実地調査においては3年分の申告書を調査対象とします。

調査担当者が事務所等に訪れ、聴き取りや書類等を調べること調査を「実地調査」といい、事業者に対する実地調査は複数年分を対象とすることが多いです。

調査を実施できる年分すべてを調査対象としないのは、過去に遡るほど申告に関連する資料等を調べるのが難しくなる点と、調査担当者が1件当たりに費やすことができる事務量が限られていることが理由として考えられます。

ただし、税務署が必要と判断すれば3年よりも前に遡って調査することもあるため、時効が成立するまでは気を緩めることはできません

無申告事案は可能な限り遡って調査する

申告書を提出していない無申告事案は一般的な税務調査とは違い、調査可能期間すべてを調査対象とすることが多いです。

所得税や法人税などの国の税金は納税者が自主的に納税額を計算し、申告・納税する申告納税制度を採用していますが、無申告は申告納税制度を根幹から揺るがす行為です。

そのため国税当局は、無申告者の取り締まりを調査の重点項目に掲げており、調査担当者の対応も厳しくなります。

税務調査にかかる日数

税務調査を受けることになった場合、何度も調査担当者とやり取りすることになります。

実地調査は開始から終了まで2か月前後かかる

実地調査の場合、調査の連絡から調査が完了するまで2か月前後かかります。

調査がスムーズに進行すれば1か月程度で終わることもありますが、事業規模や調査範囲が広い場合には、調査が完了するまで3か月以上の期間を要することもあります。

調査対象者になると臨場調査で調査担当者と対峙するだけでなく、調査日の日程調整なども行わなければいけないので、調査対応の負担は想像よりも重いです。

臨場調査は1日中行われる

臨場調査は1日中実施され、法人の調査の場合には臨場調査が2日目に突入することも珍しくありません。

調査が実施される時間は10時から16時が基本ですが、納税者の都合に合わせて時間を前後させることもできます。

実地調査は任意調査なので、納税者の許可を得てから資料等を調べますが、正当な理由を除き資料の提示を拒むことはできません

また調査では申告に関係する資料等を調べるだけでなく、調査担当者からの質疑もあり、虚偽の回答は重加算税が課される要因となりますので注意してください。

無予告で実地調査が行われるケース

実地調査は事前に調査を実施する旨の連絡がありますが、事前に連絡することで逃亡や不正の証拠を隠蔽・破棄する恐れがある場合には、無予告で実施されることもあります。

無予告調査でも予告調査と行われる内容は変わりありませんが、連絡が入らないので調査対策を講じるのが難しいです。

税務署は申告誤りが見込まれる事案のみを対象に無予告調査を実施するため、調査を受けることとなった時点で非常に不利な状況です。

したがって、申告期限を過ぎたとしても無申告のまま放置せず、調査が入る前に申告書を提出してください。

まとめ

多くの実地調査では3年分の申告を調査対象とすることが多いですが、脱税の疑いがある納税者に対しては、法律で認められた範囲すべてを調査対象とします。

調査中に不正行為が判明すれば調査範囲が拡大することもありますので、脱税行為はもちろんのこと、虚偽答弁を行わないよう注意してください。

事業者の場合、周期的に調査を受ける可能性もありますので、調査周期を延ばすためにも適正な申告書を作成、提出することが大切です。

元銀行員×税理士フカオーくん のメチャクチャわかりやすい財務と融資のブログ

元銀行員×税理士フカオーくん のメチャクチャわかりやすい財務と融資のブログ