起業当初の資金調達手段として銀行融資は選択肢に入るのか

起業当初の資金調達手段として銀行融資は選択肢に入るのか


起業する際、手元の資金が不足しているときは銀行から融資を受けることも選択肢になりますが、銀行融資は審査条件が厳しく、状況次第では融資を受けられないことも想定されます。

本記事では、銀行から融資を受けられる可能性と、銀行融資が受けられないときの解決策について解説します。

開業資金の3分の2は金融機関等からの融資

事業を立ち上げる場合、ある程度の自己資金は用意しなければいけませんが、開業当初から融資を受けること自体は一般的です。

日本政策金融公庫が公表している「2022年度新規開業実態調査」によると、2022年における開業時の資金調達額は平均1,274万円で、そのうち882万円は金融機関等から借入れた資金です。

平均値ではありますが開業資金の3分の2以上は借入金によってまかなわれており、融資元の金融機関等には銀行だけでなく、日本政策金融公庫や民間金融機関、制度融資(地方自治体)なども含まれています。

起業したタイミングで銀行から融資を受けるのは難しい

銀行から融資を受けるためには審査を通過しなければなりませんが、起業した時点で銀行の融資審査の要件をすべて満たすことは難しいです。

銀行融資が難しい理由①:事業実績がない

銀行が起業当初に融資を行わない最大の理由は、起業したばかりの時点では事業の実績がないからです。

融資審査で重要視されている項目の一つが、借入金の返済能力の有無です。

事業を継続している企業等は事業実績がありますので、返済能力を把握しやすく、融資金額が実績に伴った額であれば、比較的審査に通りやすい傾向にあります。

一方で、起業した当初は事業実績がありませんし、売上の見通しも不透明なので返済されないリスクが大きいことから、融資を受けにくいです。

銀行は融資した金額が返済不能になった場合、損失をすべて被ることになりますので、返済能力があるかわからない状態である起業当初に融資を受けるのはハードルが高いです。

銀行融資が難しい理由②:提供できる担保が手元にない

担保は返済が滞った際、未返済の融資金額を回収するための保証として活用されます。

融資する金額が大きくなれば、返済が滞ったときのリスクは高くなりますので、銀行から担保提供が求められる確率は上がります

開業当初は事業者が担保として提供できる資産を保有していることが少ないため、担保提供が融資条件となっている場合には融資を受けることはできません

担保提供を条件としない融資制度も存在しますが、担保不要の融資については基本的に返済能力があることが前提となりますので、起業当初に銀行から資金を調達するのは難しいです。

銀行以外から資金調達する場合の選択肢

開業資金や事業資金は、銀行以外の金融機関等から調達することもできますので、銀行融資が難しいときは他の場所から融資を受けることも検討してください。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、国が株主となっている政府系金融機関で、民間の金融機関から融資を受けることが難しい事業者等を支援するために貸付けを行っています。

起業して間もない時期でも融資を受けやすく、担保無しでも利用できる融資制度も存在します。

金利も比較的抑えられていますので、起業当初に資金調達する際、最初に選択肢として挙がる金融機関です。

信用金庫

信用金庫は地元に根付いた金融機関で、中小企業に対しても融資を行っています。

事業実績がない創業当初は融資審査が厳しいため、希望している融資金額を調達できないことも考えられますが、小口融資であれば中小企業や個人事業主でも利用しやすいです。

制度融資

制度融資は、地方自治体が行っている融資制度です。

地元の事業者の支援や地域を活性化させる目的で融資を行っており、融資を受けやすいだけでなく、金利も低めに設定されています。

地方自治体が主体となっているため、利用対象者は基本的に地元の企業等に限られますが、条件が合えば開業当初でも低金利で資金調達することができます。

ノンバンクのビジネスローン

ノンバンクのビジネスローンは、金融機関以外の会社が事業資金を融資するサービスです。

お金を借りやすく、条件が揃えば即日で融資を受けられることもありますが、設定されている金利は高く、融資金額が大きくなれば返済額が増加する点には注意が必要です。

積極的に利用すべき資金調達方法ではありませんが、緊急で資金調達が必要となった際には活用することも選択肢になります。

起業当初に融資を受ける際に押さえておくべきポイント

起業当初に融資を受ける場合、融資金額をいつ受け取ることができるかが重要となります。

借入先ごとで融資条件は異なる

融資を受ける際の基本的な条件はどの融資元も同じですが、利用条件や審査で重要視するポイントはそれぞれ違います

たとえば起業当初でも融資を受けやすい日本政策金融公庫は、創業して一定期間経過してしまうと利用条件を満たすことができず、融資を受けられない可能性が出てきます。

制度融資は地方自治体が主体なので地元の事業者でないと利用可能税が高く、事業内容も融資条件に含まれていることがありますので、融資条件は申請前に確認してください。

申請から融資を受けるまでに時間がかかる

日本政策金融公庫や制度融資は、申請してから実際に融資が受けられるまでの期間が長く、担保を提供する場合には担保資産の確認も行う関係上、審査を通過するのに時間を要します

銀行は日本政策金融等に比べれば審査にかかる時間は短いですが、それでも融資金額が大きければ審査に相応の日数を要します。

事業を開始する時期が決まっている場合には、資金が必要になる時期をあらかじめ確認し、日程を逆算して融資の申請準備を進めてください。

まとめ

資金調達手段としては銀行だけでなく、日本政策金融公庫や信用金庫、制度融資など銀行以外から融資を受ける選択肢もあります。

銀行融資も条件が揃えば起業当初から利用することもできますが、事業実績や提供できる担保資産がない状態だと、融資を受けられる可能性は低いです。

融資金額や金利は、融資元によっても変わりますので、資金調達する際は融資条件を確認した上で、利用する融資制度を選んでください。

元銀行員×税理士フカオーくん のメチャクチャわかりやすい財務と融資のブログ

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