創業支援融資の特徴と起業時に利用する際のポイント
創業支援融資の特徴と起業時に利用する際のポイント
政府系金融機関や地方自治体は、事業資金の調達が難しい創業当初の個人・企業を支援するために、創業支援融資制度を用意しています。
本記事では、創業支援融資の特徴と、制度を利用する際のポイントについて解説します。
創業支援融資の概要
創業支援融資は、創業・起業・開業を行う事業者を支援するための融資制度です。
国は事業を立ち上げることを積極的に支援しており、中小企業庁では経営サポートの一環として、創業を検討しているベンチャー企業を資金調達だけでなく、情報提供等の側面からも支援しています。
また、国は市区町村と民間事業者等が行っている創業者への支援体制を整備する取り組みを後押しするための助成も行っており、市区町村等が創業して間もない事業者へ融資しやすい環境を整えています。
地方自治体の創業支援融資の特徴
地方自治体の創業支援融資は、創業当初でも低金利でまとまった金額の融資を受けられるのが特徴です。
資金調達する際、銀行や金融機関から融資を受ける選択肢もありますが、創業当初は事業実績がないため、大金を借りることは難しいです。
融資を受けられたとしても、実績のない事業者への貸し付けは返済が滞る可能性があることから、リスクヘッジとして金利は高めに設定されます。
それに対し、地方自治体が行っている創業支援融資は、国が起業した会社等を支援する際の補助を行っていることもあり、金融機関よりも低い金利で融資を受けることが可能です。
信用力が低い事業者は、信用保証協会を保証人として付けなければならいないケースもありますが、国は創業者支援施策の一つとして、保証限度額3,500万円の保証制度を創業後5年未満の事業者向けに用意しています。
貸主の立場からすると、借主の返済が滞っても信用保証協会が3,500万円まで保証してくれるので、地方自治体の創業支援融資の融資限度額は高めに設定されています。
地方自治体が行っている創業支援融資の事例
地方自治体の創業支援融資は、地域ごとに条件や融資内容が異なりますので、神奈川県が実施している中小企業制度融資の創業者向けの融資制度を事例の一つとして紹介します。
神奈川県の創業支援融資は、融資限度額3,500万円に設定されており、融資金利は創業特例の対象の場合、年1.6%以内と低水準です。
保証人は原則不要となっているので融資が受けやすく、保証人を付けることができれば、信用保証料率を抑えることができます。
<神奈川県の創業支援融資の概要>
主な対象者 | 〇事業を行っていない創業前の個人で、次のいずれかに該当する者
〇事業を行っていない個人が事業を開始し、創業後5年を経過していない中小企業者 |
資金使途 | 運転資金、設備資金 |
融資限度額 | 3,500万円 |
融資金利 (固定金利) |
〇原則
年1.8%以内 〇創業特例 年1.6%以内 |
融資期間 | 1年超~10年以内 |
返済方法 | 分割返済(1年以内の据置き可) |
担保 | 不要 |
保証人 | 〇法人代表者以外の連帯保証人は原則不要
〇次の要件を満たした法人は、経営者保証を不要にすることも可
|
信用保証料率 | 〇原則
0.40% 〇創業特例 0.00% |
日本政策金融公庫が行っている創業支援融資の特徴
日本政策金融公庫は、国が株主となっている政府系の金融機関です。
中小企業や個人事業主に対しての融資を積極的に行っているのが特徴で、創業時の融資制度は、業種・創業者の年齢・性別等の条件に応じて様々な種類を用意しています。
下記の融資制度は、民間の金融機関から融資を受けにくい方々を対象としていますが、金利が低めに設定されているのがポイントです。
また無担保・無保証人で利用できる融資制度もありますので、創業して間もない事業者でも融資を受けやすいように制度が設計されています。
<創業時に利用できる融資制度>
種類 | 対象者 |
新規開業資金 |
※生活衛生関係等の一部業種を除く |
生活衛生新企業育成資金 |
|
新創業融資制度 |
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資本性ローン | 次の条件を満たす中小企業・小規模事業者
|
創業支援融資を利用する際のポイント
起業する際に創業支援融資を活用するメリットは多いですが、融資を受ける際の注意点もありますので、申請前にご確認ください。
融資を申請できる期間が限られている
創業支援融資は、創業する事業者や創業して間もない企業等を対象にしていますので、創業して一定期間経過している場合、経営状況に関係なく制度を活用することができません。
事業を開始している企業等については利用対象の条件を満たしているか確認し、期限が差し迫っている場合には、早急に申請手続きを行ってください。
融資金額が入金されるまでに時間を要する
創業支援融資は、融資申請から通過するまでには時間がかかるため、利用する際は計画的に申請しなければなりません。
地方自治体の創業支援融資の場合、地方自治体だけでなく、商工会や金融機関、信用保証協会など、複数の機関等が携わっています。
融資申込者が商工会等に申請を行った後、商工会等は金融機関と信用保証協会に連絡し、融資を実施するか判断しますので、民間の金融機関に比べて融資されるのが遅いです。
即金が必要になる場合には、創業支援融資で資金調達するのは難しいため、他の手段を用いてください。
まとめ
国は経済の低迷から脱却するために、創業者への支援を積極的に行っていますので、創業当初でも低金利で資金調達することが可能になっています。
ただ融資条件を満たさなければ資金調達はできませんし、地方自治体や日本政策金融公庫の融資にも審査がありますので、事前準備は不可欠です。
知られていない融資制度は多数ありますので、現時点で活用できる資金調達手段を把握するためにも、専門家に相談して最適な方法で事業資金を調達してください。